医療お役立ちコラム

風疹、なぜ30~50代男性に多い?

2018/12/01

風疹(ふうしん)がにわかに流行しています。風疹とは、「風疹ウイルス」に感染することで発症する感染症のこと。

国立感染症研究所 感染症疫学センターの発表によると、11月21日時点で、今年に入って2,186人の風疹患者さんが報告されているそうです。なかでも多いのが、30~50代の男性で、全体のおよそ3分の2を占めています。

なぜ、この年代の男性がかかることが多いのでしょうか? 

それは、予防接種の制度が関係しています。

風疹患者は、なぜ30~50代男性が多いのか

風疹は、ワクチン(予防接種)によって予防可能な病気です。

そのため、現在は、1歳時と小学校に入る前の2回、無料で受けられるようになっています。ところが、現在のような制度になったのは2006年のことと、比較的最近なのです。

そもそも日本で風疹ワクチンの予防接種がはじまったのは1977年のこと。当時は、中学生の女子のみを対象としてはじまりました。

「なぜ、女の子だけ?」と不思議に思うかもしれません。

免疫のない女性が妊娠初期に風疹にかかると、風疹ウイルスが胎児に感染し、生まれてくる赤ちゃんが「先天性風疹症候群」という病気を発症する可能性があるのです。そのため、将来妊娠の可能性がある女子中学生を対象とした集団接種として、風疹ワクチンの予防接種ははじまりました。

男子も対象となったのは、1995年4月からです。当時は生後12~90か月の男女を対象に予防接種が義務化されました。

こうした変遷を経ているので、年代や性別によって、風疹の予防接種を受けているかどうかは異なるのです。

ちなみに、50代以降の人たちは、予防接種は受けていなくても、多くの人が風疹にかかった経験をもつため、風疹ウイルスに対する抗体を持っていると言われています。

風疹の症状、治療

  • 微熱
  • 発疹
  • 耳や首の後ろのリンパ節の腫れ

風疹ウイルスに感染してから2、3週間で、こうした症状があらわれます。

風疹に対する特効薬はありません。治療は、症状をやわらげるための対症療法のみですが、自然によくなっていく病気です。

「先天性風疹症候群」とは?

風疹自体は、前述のとおり、自然治癒していく病気ですし、症状もそう強くありませんが、気をつけなければいけないのが、妊娠初期の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんに「先天性風疹症候群」になり、障害を引き起こす恐れがあるということです。

だからこそ、風疹の予防接種は、女性を対象にはじまったのです。

  • 先天性心疾患
  • 難聴
  • 白内障

この3つが、先天性風疹症候群の3大症状と言われています。そのほか、網膜症や肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球(先天的に眼球が小さいこと)といった症状があらわれることもあります。

風疹ウイルスは、インフルエンザウイルスなどよりも強い感染力があります。咳やくしゃみ、会話などでの「飛沫感染」が、主な感染経路です。

将来妊娠の可能性がある女性はもちろん、まわりにいる男性、家族も含めて、風疹の予防接種を受けたがどうか、さだかではない方は、抗体の有無を調べる検査があります。知らず知らずのうちに感染源になってしまうことがないようにしましょう。