医療お役立ちコラム
「Choosing Wisely」――医療の賢い選択って?
2019/06/01
「Choosing Wisely(チュージング・ワイズリー)」という言葉、耳にしたことはありますか?
直訳すれば、「賢く選ぶ」。
医療において「賢明に選択しよう」という国際的なキャンペーンです。
では、「賢く」「賢明に」とはどういうことでしょう? 日本でChoosing Wiselyを広める活動をしている団体「Choosing Wisely Japan」のホームページ(https://choosingwisely.jp/)では次のように説明されています。
「医療者と患者が、対話を通じて、科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)の“賢明な選択” をめざす、国際的なキャンペーン活動」
もう少し端的に言うならば、
根拠の乏しいまま行われている医療を見直し、無駄な医療はやめましょう――
そういう意図で使われています。
「5つのリスト」とは?
Choosing Wiselyというキャンペーンが始まったきっかけは、2002年に公表された「新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズムズム:医師憲章」でした。
これは医の“あるべき姿”を提唱したもので、「患者の福利」「患者の自律性」「社会正義」という3つの原理と10の責務で構成されています。
この医師憲章の精神を実践するために米国内科専門医機構(ABIM)財団主催のフォーラムが毎年開催され、2011年のフォーラムのテーマとして使われたのが「Choosing Wisely」という言葉だったのです。
その後、アメリカではそれぞれの専門領域に、「医師、患者双方にとって問い直すべき5つのこと(Five Things Physicians and Patients Should Question)」、つまりは“臨床的な意義の低い5つの診療行為”を列挙することが求められ、実際に多くの専門学会から5つの診療行為が寄せられました。
これが、5つのリストです。
日本の「5つのリスト」
この動きは各国に広がり、日本でも5つのリストを発表する団体が出てきています。
たとえば、総合診療指導医コンソーシアム(ジェネラリスト教育コンソーシアム)が発表した5つのリストは、下記のとおりです。
- 健康で無症状の人々に対してPET-CT検査によるがん検診プログラムを推奨しない
- 健康で無症状の人々に対して血清CEAなどの腫瘍マー カー 検査によるがん検診を推奨しない
- 健康で無症状の人々に対して MRI 検査による脳ドック検査を推奨しない
- 自然軽快するような非特異的な腹痛でのルーチンの腹部CT検査を推奨しない
- 臨床的に適用のないル-チンの尿道バルーンカテーテルの留置を推奨しない
医療者と患者のコミュニケーションが大事
Choosing Wiselyの基本は、医療者と患者が話し合いながら、今行われている治療が本当に必要かどうかを考える、ということ。
科学的根拠(エビデンス)があるかどうかも大切ですが、その患者さんにとって本当に必要かという視点がとても重要です。
たとえば、複数の医療機関や診療科にかかって、それぞれで薬を処方された結果、薬が増え過ぎていませんか? そのなかには効能が似ている薬、相性の悪い薬も含まれているかもしれません。
あるいは、市販薬を漫然と飲み続けていませんか?
薬との付き合い方も、賢い選択を。
薬のChoosing Wiselyについて悩んだときには、薬剤師にご相談ください。