医療お役立ちコラム

薬剤師は、なぜ“最後の砦”なの? ドラマ「アンサング・シンデレラ」より

2020/08/01

石原さとみさんが主役をつとめるドラマ「アンサング・シンデレラ」の放送がはじまりました。舞台は、病院。医療をテーマにしたドラマはよくありますが、今回の主役は病院薬剤師です。

病院薬剤師が主役となる連続ドラマは、本邦初だそうです。

そこで、ドラマ内で印象に残ったセリフを引用しつつ、薬剤師の仕事内容をご紹介します。

「薬剤師は患者さんを守る“最後の砦”」

「薬剤師は患者さんを守る“最後の砦”だから、見落としや失敗は絶対に許されない」

これは、第1話で主人公の葵みどり(石原さとみさん)が新人薬剤師の相原くるみ(西野七瀬さん)に諭すように言うセリフです。

なぜ、「最後の砦」なのでしょうか?

それは、処方せんの内容に間違いや気になる点がないか(薬の用量や服用期間は適切か、効能の同じ薬や相互作用のある薬が出ていないか、など)、薬が患者さんの手に渡る前に最後に確認するのが薬剤師だからです。

薬剤師法の第24条には「処方せん中の疑義」という項目があり、次のように書かれています。

第二十四条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。

「疑義」という言葉、あまり聞きなれないかもしれませんが、辞書を引くと「疑問に思われる点」とあります。

処方せんに沿って正しく薬を揃え、患者さんにお渡しするのが薬剤師の仕事ということはよく知られています。でも、それだけではなく、処方せんを見て、疑問があったら処方せんを出した医師に問い合わせ、「最後の砦として患者さんを守る」ことも、薬剤師の仕事です。

「病気を治すのは薬剤師ではなく、薬」

「患者のことも大切だけれど、薬剤師は薬と向き合うのが仕事だ。病気を治すのは我々じゃなく、薬だから」

これは、第1話で、池田鉄洋さん演じる薬剤部副部長が、患者さん一人ひとりに時間をかけがちな主人公に向けて放つセリフです。

病気を治すのは薬。たしかにそうです。

ただ、だからこそ、薬を正しく使ってもらうことが大事です。一人ひとりの患者さんに正しく薬をお渡しするとともに、患者さんが正しく服用できるようにわかりやすく説明をすること。それもまた薬剤師の仕事です。

ちなみに、薬剤師法第25の2には、下記のように「情報の提供及び指導」という項目があります。

第二十五条の二 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

「大切な日常、未来を守っていくのが仕事」

第3話では、冒頭、「病院の外にはそれぞれの大切な日常があって、これからもそれぞれの未来が続いていく。それを守っていくのが私たち薬剤師の仕事だ」という主人公のナレーションがありました。

そして、このドラマでは毎回、エンディングで、病院を出たあとの患者さんの日常、少し先の未来が描かれます。

薬は何のために使うのかと言えば、直接的には、病気を治すため、困っている症状を和らげるためですよね。では、それは何のためかと言えば、生活を守るためであり、その先の未来を守るためです。

生活のなかで薬を服用するうえで、何か心配なこと、気がかりなことがありましたら、どうぞ薬剤師にご相談ください。

同じ病気や症状に対する薬でも、服用方法や薬が効くメカニズムの異なる複数種類の薬がある場合もあり、その方の生活スタイルにより合うものを提案できることもあります。まずはお気軽にご相談いただければと思います。