医療お役立ちコラム

新型コロナはパンデミックではない⁉

2020/11/01

新型コロナウイルスは、パンデミックではない――。

これは、世界でもっとも評価の高い医学雑誌のひとつと言われる「ランセット(THE LANCET)」に掲載されたレポートのタイトルです。

2020年10月末現在で、新型コロナウイルス感染症による死亡者数は110万人を超えています。それなのに「パンデミック(pandemic:世界的流行)」ではない、とはどういうことなのでしょうか。

パンデミックではないなら何が起きているのか

このレポートでは、新型コロナは「パンデミック」ではなく「シンデミック(syndemic)」だ、と述べています。

シンデミックとは、複数の流行が互いに重なり合うように起こり、悪影響を及ぼしあうこと。1990年代にアメリカの医療人類学者のメリル・シンガーという人が提唱した「シナジー」と「エピデミック」を合わせた造語です。ちなみに、シナジー(synergy)はシナジー効果とよく言われるように相乗作用のこと。エピデミック(epidemic)とはある地域や社会である病気が大量に発生することです。

では、何が相互作用を起こしているのでしょうか?

それは、新型コロナウイルス感染症と非感染性の病気(つまりは高血圧や肥満、糖尿病、心臓病、慢性呼吸器疾患、がんなど)が特定の集団内で相互作用している、と言います。そしてその背景には、社会的・経済的格差がある、と指摘します。

感染症対策だけではコロナの問題は解決しない

新型コロナ対策と言えば、まず思い描くのが感染経路を断つことだと思います。それが感染症予防、感染拡大防止の基本です。でも、新型コロナはそれほど単純な話ではなく、新型コロナを単なる感染症とみなして対応するのは「非常に狭いアプローチ」だ、とレポートは指摘します。

では、どういう対応が求められるのでしょうか。

まず、高血圧、肥満、糖尿病、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、がんといった非感染性の病気(いわゆる慢性疾患)に対処することが新型コロナの封じ込めを成功させるための前提条件になる、と言います。

また、政府が深刻な格差を解消するための政策を打たない限り、真の安全を確保することはできない、とも強調します。

日本でも起きている、うつ、不健康、自殺の問題

日本でも「コロナうつ」や「コロナ太り」「コロナ貧困」といった言葉がよく聞かれるほか、コロナを気にして家にこもっているうちに高齢者の足腰、口まわりの筋肉が衰えた(フレイル、オーラルフレイル)、認知症が悪化したといった話も耳にします。

さらに言えば、自殺者数も、8月、9月と前年同月に比べて増えました。とくに女性の自殺が増えていることが顕著で、DVや非正規雇用の問題、産後うつ、育児や介護の疲れなどの深刻化が影響しているのではないか、と指摘されています。

新型コロナという感染症を広めないためにマスクをつける、三密を避けるなど、一人ひとりができる範囲で気を配ることも大切ですが、それだけではなく、もっと広い視野で心と体の健康を保つこと、社会の健康を保つことも大切なのだと教えてくれたレポートでした。

ランセットに掲載されたレポートはこちら↓

Richard Horton「COVID-19 is not a pandemic」
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32000-6/fulltext