医療お役立ちコラム

コロナワクチン後の解熱鎮痛剤の選び方

2021/07/01

新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進められていますが、頭痛や発熱といった副反応が少なくない割合で起こることが報告されています。

こうした話を聞き、事前に解熱鎮痛剤を用意している方もいるでしょう。最近では全国の薬局で一部の解熱鎮痛薬が品薄になっているというニュースも見聞きします。

今回は、コロナワクチン接種後の副反応と解熱鎮痛剤についてお伝えします。

コロナワクチン後の副反応が起こる割合は?

新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種後、どのくらいの割合で副反応が起きているのか――。気になりますよね。

厚生労働省が6月23日に発表した調査結果によると、ファイザー社のコロナワクチンを先行接種した約2万人の医療従事者のうち約4割の人に、2回目の接種後、37.5度以上の発熱が見られたそうです。

同様に頭痛も、1回目よりも2回目の接種後に多く、全体の半数以上で報告されています。

解熱鎮痛剤とは

こうした副反応に対する対処法について、厚生労働省は、サイト「新型コロナワクチンQ&A」(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/)で、「ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか」という「Q」で解説しています。

この「Q」に対するアンサーはというと、「ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬で対応いただくことも考えられます」とした上で、具体的な解熱鎮痛薬の種類も紹介しています。

ここで、そもそも解熱鎮痛剤とはどんな薬なのか、簡単に説明しましょう。

いわゆる「痛み止め」や「熱さまし」と呼ばれる薬です。頭痛や歯痛、腰痛、生理痛、神経痛などの鎮痛(痛み止め)、発熱時の解熱(熱さまし)に用いられるのが「解熱鎮痛剤」です。

コロナワクチン後に使える解熱鎮痛剤の種類は?

薬局やドラッグストアに行くと、いろいろな種類の解熱鎮痛剤が売られています。

コロナワクチンの接種後の発熱や痛みに対しては、どんな解熱鎮痛剤が使えるのでしょうか。先ほどの「新型コロナワクチンQ&A」では、次のように説明しています。

「市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただけます」

つまり、具体的には「アセトアミノフェン」や「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」を挙げています。

「アセトアミノフェン」は、解熱鎮痛剤の一つで、中枢神経系の体温中枢に作用し、熱を体外に逃がす働きをします。比較的副作用が軽く、市販の風邪薬にも配合されています。

「非ステロイド性抗炎症薬」も解熱鎮痛剤の一つで、痛みや炎症の原因となる物質(プロスタグラジン)の生成を抑えることで、解熱・鎮痛・抗炎症作用を示します。「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」などが、非ステロイド性抗炎症薬としてよく知られています。

なぜアセトアミノフェンが品薄なのか

ところで、報道で、アセトアミノフェンを含む解熱鎮痛剤が店舗で品薄になっているというニュースを耳にした方も多いと思います。

なぜ、コロナワクチンの副反応に備えてアセトアミノフェンのほうを買う人が多いのでしょうか。それは、新型コロナウイルス感染症が流行した当初から、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が新型コロナの症状を悪化させるのではないか、という考えがあったからです。また、そもそもインフルエンザなどの他の感染症においても、NSAIDsよりも副作用の少ないアセトアミノフェンが推奨されることが多いのです。

ただ、今回のコロナワクチン後の発熱や痛みに対しては、厚生労働省は、前述したとおり、アセトアミノフェンもNSAIDsも服用できるとしています。

その背景には、アメリカ疾病対策センター(CDC)も、アセトアミノフェンだけではなくNSAIDsも使用して良いとしていること、また、ファイザー社が行った大規模臨床試験で多くの人がNSAIDsを含む解熱鎮痛剤を服用していたものの重大な副作用は見られなかったこと――などがあると考えられています。

注意が必要な人

ただし、ワクチン後の発熱や痛みに対して解熱鎮痛薬を使う際、注意が必要な方もいます。

厚生労働省の「新型コロナワクチンQ&A」では、次のような場合には主治医や薬剤師に相談するよう注意喚起を行っています。

・他のお薬を内服している場合や、妊娠中、授乳中、ご高齢、胃・十二指腸潰瘍や腎機能低下など病気治療中の場合 → 飲める薬が限られていることがある

・薬などによりアレルギー症状やぜんそくを起こしたことがある場合

・激しい痛みや高熱など、症状が重い場合や、症状が長く続いている場合

・ワクチン接種後としては典型的でない症状がみられる場合

不安な方は、かかりつけの医師に相談するか、どうぞ薬局の薬剤師にご相談ください。

◎参考

厚生労働省「新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_kenkoujoukyoutyousa.html

厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」

――Q ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0007.html

CDC「Possible Side Effects After Getting a COVID-19 Vaccine」

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/expect/after.html