医療お役立ちコラム

薬の「困った」を助けるサービス③「服用薬剤調整支援」

2022/07/01

薬局といえば、処方された薬を受け取る場所ですが、じつはそのほかにも患者さんやご家族の「困った」を助けるサービスがあります。

 今回は、「日頃飲む薬の種類が増えて、飲み忘れそうで困っている」「複数のクリニックにかかっているうちに薬が増えちゃった……」といった場合に知っておいていただきたい『服用薬剤調整支援』についてお伝えします。

薬が増えて困っていませんか?

 服用薬剤調整支援とは、ポリファーマシー対策のためのサービスです。

 ポリファーマシーとは、「多剤併用」や「多剤服用」と訳されることが多いですが、単に多くの薬を服用しているだけではなく、それによって健康や医療費にマイナスの影響を与えてしまうことです。

 たとえば、

毎日飲む薬の種類が増えて、つい一部を飲み忘れるようになってしまった……。

持病や気になる症状が複数あり、複数の診療科(クリニック)にかかっているうちに、それぞれの診療科(クリニック)で薬を処方されるので、薬の種類がだんだん増えていった……とか。

そんなときに、知っておいてほしいのが「服用薬剤調整支援」というサービスです。

「服用薬剤調整支援」とは

「服用薬剤調整支援」とは、たくさんの種類の内服薬が処方されている患者さんに対して、薬剤師が、処方した医師に文書で減薬を提案し、薬の調整を行うこと。

 基本的には、6種類以上の内服薬が処方されている患者さんが対象になります(解熱鎮痛剤などの頓服薬は含みません)。

なぜ「ポリファーマシー」はいけないのか

ところで、なぜポリファーマシーが問題になるのでしょうか?

薬は、当然、何らかの必要性(メリット)があって処方されているわけですが、不適切に多くの薬を飲むことはデメリットを大きくしてしまいます。

薬の種類が増えることで飲み忘れ・飲み間違いが生じたり、複数の薬の飲み合わせによって効果が増強されたり、逆に打ち消し合ってしまったり、副作用が大きくなってしまったり。あるいは、複数の医療機関で薬を処方してもらったところ、じつは、同じ薬効をもつ薬が重複投与されていた……ということもあります。

また、不必要な多剤服用は、患者さん自身の医療費、社会にとっての医療費という観点からも大きな問題です。

その薬の数が適切かどうかはケースバイケースなので、何種類以上で「多剤」と言われるのか、明確な定義はありません。ただ、日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』によると、高齢の入院患者さんの場合、「6種類以上で薬物有害事象のリスクは特に増加」したそうです。

「服用薬剤調整支援」にかかる費用は?

「薬が増えて困っている……」という方は、一度、薬局で薬剤師に相談してみてください。

ちなみに、薬剤師に相談して、薬剤師から処方医に減薬の提案などを行った場合、「服用薬剤調整支援料」という名目で費用がかかります。

 なお、この服用薬剤調整支援料には「1」と「2」があります。

●「服用薬剤調整支援料1」とは……

4週間以上にわたって6種類以上の内服薬を処方されていて、「お薬の量が多くて困っている……」という場合、薬剤師に相談すると、その薬剤師が、処方医に対して文書で減薬を提案します。そして、実際に2種類以上減少したら、「服用薬剤調整支援料1」として1,250円かかります。ただし、患者さんが実際に払うお金は、この1~3割です。

●「服用薬剤調整支援料2」とは……

複数の医療機関にかかっていて、複数の医師から合わせて6種類以上の内服薬が処方されているという患者さんが対象です。薬剤師に相談すると、どんな薬が処方されているのか、という全体を把握し、重複投薬や飲み合わせの悪い薬がないかなどをチェックした上で、薬剤師が処方医に対して文書で減薬の提案を行います。

この場合、「服用薬剤調整支援料2」として1,100円または900円がかかります(薬局によって異なります)。なお、これについても患者さんが実際に支払うお金は、この1~3割です。

◎参考

日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20170808_01.pdf#page=14