医療お役立ちコラム

コロナへの備え「カロナール」じゃないといけないの?

2022/09/01

新型コロナウイルスの第7波の流行が続くなか、解熱鎮痛剤の「カロナール」が品薄になっているというニュースを耳にした方は少なくないと思います。普段から痛み止めや熱さましとしてカロナールを使っていた方は「え、買えないの?」と不安になったかもしれません。また、いざというときのために常備しておきたいという方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、解熱鎮痛剤について説明します。

解熱鎮痛剤とは

そもそも解熱鎮痛剤とはどんな薬でしょうか。名前のとおり、熱を下げ、痛みを抑える作用のある薬です。

解熱鎮痛剤の種類

 解熱鎮痛剤は「アセトアミノフェン」と「NSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性消炎鎮痛剤)」の大きく2つに分類されます。

 今、「品薄になっている」と言われているカロナールは、アセトアミノフェンのほうです。

 一方、「イブ」や「ロキソニン」「バファリンA」といった解熱鎮痛剤がNSAIDsに該当します。

「アセトアミノフェン」と「NSAIDs」の違い

 アセトアミノフェンもNSAIDsも、熱を下げる作用(解熱作用)と痛みを抑える作用(鎮痛作用)があることは同じです。違うのは、「抗炎症作用があるかどうか」と「副作用」です。

 NSAIDsは炎症を抑える作用がありますが、アセトアミノフェンにはありません。

 また副作用は、アセトアミノフェンのほうが少なめです。NSAIDsは、消化性潰瘍(胃腸の粘膜が傷つくこと)や腎障害といった副作用が知られていて、小さな子どもや妊娠中の方には基本的にはすすめられません。一方、アセトアミノフェンは比較的副作用が少なく、子どもや妊娠中の方を含め、幅広く使われます。

ただし、アセトアミノフェンも副作用がないわけではなく、過剰に服用すると肝障害を起こす危険性があるので、1日の使用上限が決められています。

なぜカロナールが不足しているの?

 では、なぜカロナール(アセトアミノフェン)が不足しているのでしょうか。

 化学工業日報(※1)によると、アセトアミノフェンの処方は7月だけで400万人を突破し、前月に比べて激増しています。とくに5歳以上10歳未満、20歳以上30歳未満という若い年代において処方が増えているそうです。

 新型コロナの流行当初、NSAIDsの使用がかえって悪化につながる可能性が指摘されていたことに加え(現在は科学的な根拠はないと考えられています)、アセトアミノフェンのほうが副作用が少なくてより安全という認識がメディアなどを通じて広がったからでしょう。

カロナール以外の選択肢

 でも、新型コロナウイルス感染症にかかったときの解熱剤はカロナールではないといけないのかと言えば、そうではありません。

 まず同じ「アセトアミノフェン」を有効成分とする別の薬があります。「タイレノールA」「ラックル」といった市販薬も、カロナールと同じアセトアミノフェンを有効成分とする解熱鎮痛剤です(ちなみに、カロナールは処方薬です)。

 ですから、もしものときのためにアセトアミノフェン系の解熱鎮痛剤を常備しておきたい方は、こうした市販薬を買っておいてもいいでしょう。

 また、大人で、妊娠の可能性もないのであれば、アセトアミノフェンにこだわる必要もありません。「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」などを有効成分とするNSAIDsでも心配ないと思いますので、ぜひ薬局やドラッグストアの薬剤師に相談してください。もしもかかりつけ薬局がある場合には、そこで相談していただければと思います。

※1