医療お役立ちコラム
「命を縮めるクスリ、のばすクスリ」――雑誌「プレジデント」
2023/06/01
ビジネス誌『プレジデント』(プレジデント社)2023年6月2日号の特集は「間違いだらけの健康常識100」でした。その冒頭に掲載されていたのが、薬との向き合い方をテーマにした対談「東大医学部卒医師が明かす 最新版『命を縮めるクスリ、のばすクスリ』」です。対談者は、『80歳の壁』(幻冬舎新書)などのベストセラーを持つ和田秀樹医師と、医療ジャーナリストの鳥集徹さんです。内容をかいつまんでお伝えします。
なぜ薬が増えるのか
こういうタイトルを見ると、「自分が飲んでいる薬は大丈夫かな?」と心配になる人もいるかもしれませんが、この対談では薬を否定しているわけではありません。対談の冒頭、和田先生は「今のご時勢、副作用の大きな薬は認可されない」「40代で一つしか病気を持ってないのなら、薬についてそれほど心配する必要はない」と話しています。
そのうえで、お二人が特に問題にしているのは、高齢になって複数の病気を抱えたときに薬が増えやすいことです。複数の診療科・医療機関にかかっていると、気づかないうちに同じ作用の薬が重ねて処方されていることも。
また、関節痛である病院にかかったら痛み止めを処方され、その副作用で高血圧になって別の医療機関を受診して……と、薬の副作用によって生じた症状に対して新たな薬が処方されて薬が増えていくこともある、と指摘します。こうしたことを「処方カスケード」と呼びます。
薬の優先順位を考える
薬が増えたときにはどうすればいいのか――。鳥集さんは「薬の優先順位を考えるべき」と指摘します。それぞれの薬には処方された意図があります。何のための薬なのか、生活習慣を改善することでカバーできないかといったことを考え、かかりつけ医と相談して優先順位を考えてほしい、といいます。
例えば、血圧やコレステロール値が高いことがなぜいけないのかといえば、動脈硬化につながり、その先に心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクを上げるからです。つまり、血圧やコレステロール値を下げることが最終的な目的ではなく、ゴールは心筋梗塞や脳卒中を防ぐこと。そうであれば、「心臓ドックを受けて冠動脈狭窄が起きていないかどうかを診」ることも一つの方法だと和田先生はいいます。
薬の本当の目的を知りましょう
対談でお二人が終始話されていたのは、薬の優先順位を考えること、年齢によって、人によって薬の意味合いは変わること。
皆さんは、処方されている薬について「何のために飲んでいるのか」をご自身で把握されていますか? 症状を改善するためなのか、将来的に起こり得る大きな病気のリスクを下げるためなのか……、ご自身でちゃんと把握しましょう。わからないときには、主治医の先生や薬局薬剤師にご質問ください。
また、自分のリスクを知るには、日本動脈硬化学会の動脈硬化症疾患発症予測アプリ「これりすくん」(https://www.j-athero.org/general/gl2022app/general.html)や、生活習慣病の疫学調査である久山町研究の成果に基づいて生活習慣病発症予測ツール「ひさやま元気予報」(https://hgy-fukuoka.jp/)も役立ちます。これらは、健康診断等の結果を入力することで、将来、心血管病などを起こすリスクがどのぐらい高いかを教えてくれます。リスクがわかれば、薬の必要性もわかりますよね。
ただ、これりすくんは40~79歳、ひさやま元気予報は40~84歳を対象としているので、より高齢の方はやっぱりかかりつけ医の先生にご相談ください。
◎参照
『プレジデント』(プレジデント社)2023年6月2日号