医療お役立ちコラム
虫よけスプレーの選び方
2023/07/01
夏を迎え、屋外で活動する機会も増えているのではないでしょうか? 熱さとともに気になるのが、蚊をはじめとした虫。今回は虫よけスプレーの選び方についてお伝えします。
そもそも虫よけスプレーの効果とは
虫よけスプレーは、「忌避(きひ)剤」とも呼ばれます。殺虫剤のように虫を殺すものではなく、あくまでも虫を遠ざける、蚊であれば吸血を防ぐためのものです。
ちなみに、虫よけスプレーは塗布した表面の近くでのみ効果を発揮するため、虫よけスプレーを使っていても虫は人のまわりを飛び回ります。
虫よけスプレーを選ぶポイント
虫よけスプレーを選ぶときには、「有効成分」とその「濃度」をチェックしましょう。
市販されている虫よけスプレーに使われている有効成分には、主に3種類あります。
●ディート(DEET)
ディートとは、化学名は「ジエチルトルアミド」といい、1946年にアメリカで開発された虫よけ剤です。日本でも50年以上にわたって広く使われています。
日本では、ディートの濃度が12%以上のものは「一般用医薬品」、10%以下のものは「医薬部外品」と分類され、2016年からは最高で30%配合のものまで販売されています。
では、ディートの濃度が高いほうが、効果も高いのでしょうか?
実はそうではなく、虫よけ効果は基本的に同じで、違うのは持続時間です。
一般的にはディート濃度30%で約6時間、15%で5時間、10%で3時間といわれています。ただし、商品によっても異なるので、具体的にはパッケージをチェックしましょう。
また、ディートは毒性が低いものとして広く使われていましたが、2000年前後にアメリカやカナダで安全性について再評価する動きがあり、日本でも次のような使用上の注意が設けられるようになりました。
・生後6か月未満は使用してはいけない
・生後6か月以上2歳未満は1日1回
・2歳以上12歳未満は1日1~3回
・ディート濃度30%の商品は、12歳から(12歳未満には使ってはいけない)
また、乳幼児の場合には、なめてしまう可能性があるため、手や顔への使用も避けましょう。つまり、子どもに使うときにはちょっと注意が必要ということです。
●イカリジン
小さい子どもにも使えることを謳って市販されている虫よけスプレーによく使われている成分が「イカリジン」です。1986年にドイツで開発され、日本では2015年に承認された、比較的新しい虫よけ成分です。
イカリジンは、年齢による使用制限がなく、皮膚への刺激も少ないといわれています。
また、現状、イカリジン濃度15%が認められている最高で、ディートと同じように、濃度が高いほうが持続時間は長くなります。イカリジン15%配合で6~8時間といわれているので、ディート30%配合の商品と同じくらいですね。
●天然成分
ディートやイカリジンのような化学物質ではなく、ユーカリやレモングラス、ペパーミントといった天然由来の有効成分を使った虫よけスプレーも、最近よく見かけます。
これらは肌への刺激が少ない一方で、持続時間はディートやイカリジンに劣ります。短い外出やこまめに塗布できるときに適しています。
また、「天然由来だから安心」と思うかもしれませんが、じつは、そうとは限りません。たとえばユーカリ油(レモンユーカリ油)を主成分とした虫よけ剤は植物由来のもののなかでは比較的効果が長く続き、蚊に対して低濃度のディートと同様の効果が報告されています。ただ、一方で、ユーカリ油に含まれているシネオールという成分が中枢神経や呼吸に問題を起こす可能性があるため、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は3歳未満の子どもには使用しないよう注意喚起をしています。
日焼け止めと虫よけスプレーを同時に使うときには?
ディート、イカリジン、天然成分と、それぞれに一長一短があるので、特徴を理解した上で、自分に合ったものを選びましょう。
また、日焼け止めと虫よけスプレーを同時に使うときには、先に日焼け止めを塗って、その上から虫よけスプレーを使うのが基本です。
◎参考
国立感染症研究所「安全な忌避剤(虫除け)の使用方法」
https://www.niid.go.jp/niid/images/vir1/PDF/deet.pdf
厚生労働省「ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/08/tp0824-1.html
eJIM 厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』
旅行者のための補完療法 虫刺され
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c01/24.html
福岡県薬剤師会「虫よけ剤ディートの毒性と安全対策」